碧南市は典型的な観光地ではありませんが、この地域は白しょうゆやみりんといった高級食材の産地として知られています。ぜひ、白醤油や白だしがどのように作られているかを学べる工場見学に参加して、これらの材料を使った料理を試食してみましょう。
2025.04.28碧南市は典型的な観光地ではありませんが、地元の日本の方々にその地名を伝えると、すぐにピンとくる反応が返ってくることでしょう。なぜなら、この地域は白しょうゆやみりんといった高級食材の産地として知られているからです。
日本料理の秘密とうま味の源を探求することに興味がある方には、白醤油と白だしで有名なありがとうの里(Hichifuku Brewing Co.Ltd.が運営)を訪れることをお薦めします。
ぜひ、白醤油や白だしがどのように作られているかを学べる工場見学に参加して、これらの材料を使った料理を試食してみましょう。試食した料理のレシピは、ご家庭でも簡単に再現できます!日本料理の鍵を握る主要な食材を購入できるだけでなく、日本の食文化について、貴重な知識を得ることができるでしょう。
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目次
- 白醤油とは? 七福醸造(ひちふくじょうぞう)の歴史を簡単にご紹介します
- 「ありがとうの里」の工場見学体験:おいしい醤油の秘密は「ありがとう」!?
- 試食のセッション:白醤油を使った料理の実力をみてみましょう
- 七福醸造の製品で、日本の味 “ありがとうのお土産”を持ち帰りましょう
- まとめ
白醤油とは? 七福醸造(ひちふくじょうぞう)の歴史を簡単にご紹介します

一般的な醤油は、同量の大豆と小麦を発酵して作ります。一方で、白醤油は小麦を主原料(約90%)として、大豆は少量(10%)だけを使用して作ります。この小麦主体の構成が、白醤油特有の淡い琥珀色の色合いを生み出し、「白醤油」という名前の由来になりました。
1950年創業の七福醸造は、もともとは白醤油を専門に製造していました。白醤油において現在日本で唯一、JAS有機認証を取得しているメーカーです。また、日本で最初に白だしを作った蔵元として、現在は高品質な「白だし」でも広く知られています。
日本料理の要ともいえるだしは、味噌汁から手の込んだ野菜料理、オムレツ(だし巻き玉子)に至るまで、料理に風味や深みを与えてくれます。通常、だしは鰹節と昆布から抽出されます。

七福醸造の白だしが一線を画すのは、その複雑で繊細な味わいにあります。同社では、高品質の鰹節、椎茸、昆布に自社製の白醤油を組み合わせて、この特別なおいしさを実現しています。厳選された素材の組み合わせが、濃厚で深みのあるだしを生み出し、日本で高い評価を得ています。
七福醸造が実施している白醤油や白だしについて学べる無料の工場見学は、予約不要で気軽に参加できますので、「ありがとうの里」のショップスタッフに声をかけてみましょう。
※工場見学は日本語のみで行われるため、日本語が話せる友人や通訳者と一緒に参加することをお薦めします。また、おいしい試食品を準備してもらうには、事前に予約をすると確実です。予約がいっぱいのケースもございますので、ご注意ください。
「ありがとうの里」の工場見学体験:おいしい醤油の秘密は「ありがとう」!?

私たちが参加した工場見学では、七福醸造の三代目社長である犬塚氏が自らご案内くださいました。1950年にお祖父様が創業したこの醸造所は、現在、犬塚社長の指揮のもとで運営されています。犬塚社長の白醤油に関する豊富な知識と、白醤油に注ぐ情熱には、非常に感銘を受けます。

工場見学は七福醸造の製品や品質へのこだわりを紹介するところから始まります。小さな容器に入った白醤油の原材料を観察しながら、それらの説明をしてもらう中で、ミネラルが豊富で貴重な天日塩が使われていることがわかります。

原料の紹介に加え、工場見学では施設名に込められた「ありがとう」の意味も解説されます。七福醸造の理念は、「お客様の支え」、「前の世代の職人たちが築いた基盤」、「従業員やその家族の貢献」に対する感謝を中心に据えています。「ありがとうの里」の名前にある「ありがとう」は、日本語で「感謝」を意味し、その理念の核となっています。
日本には「言霊(ことだま)」という言葉の力を信じる文化が古くから存在します。「ありがとう(感謝)」のようなポジティブな言葉で自分の周囲を満たすと、良い結果がもたらされると考えられています。

この信念を分かりやすく示すために、スタッフが2つの瓶を見せてくれます。それぞれの瓶には、発酵が進んでいく「白米」が入っています。一つには「ありがとう(感謝)」と書かれ、もう一つには「ばかやろう(馬鹿野郎)」と書かれています。「ありがとう」のラベルが貼られた瓶の中は明らかにきれいで、見た目も美しく、ポジティブな言葉の力を示しています。

工場に入ると、「ありがとう」と大きく書かれた白醤油を熟成する大型タンクが目に入ります。

そして、搾りたての白醤油を試飲できます。見学では約3トンの小麦と大豆を蒸す工程から始まる製造プロセスについて学びます。小麦と大豆を蒸し終えた後、冷却され、麹菌(アスペルギルス・オリゼ)で発酵させ、大型タンクで約6ヶ月間熟成されます。

また、工場のスタッフは、日本の主要な醤油の種類を比較した表で、白醤油の特徴を詳しく説明してくれます。

その後、見学ツアーは七福醸造が誇る「白だし」に移ります。その卓越した品質は、厳選された材料から生まれます。その素材を実際に目で確かめることができます。特に、高価で希少な本枯れ鰹節を使用しているのが特徴で、これが白だしに豊かな旨味を与えています。さらに、北海道産の高級昆布(こんぶ)、大分県産の椎茸(どんこ)、そして自社製の白醤油が組み合わさります。
白だしは、一般的なだしと同じように、日本料理において非常に汎用性が高く、味噌汁、煮物、玉子焼き、漬物など、さまざまな料理の味を引き立てます。

工場見学では、大きな窓から製品の瓶詰めに使用されるドイツ製の最先端機器を見ることができます。

見学の最後には、七福醸造の歴史を物語る貴重な資料の展示を見ることができます。たとえば、創業者である一代目が使用していた運搬用の容器や、発酵に使う大きな木桶など、日本の職人たちの知恵を象徴する品々が、たくさんあります。

これらは博物館の展示品というよりも、むしろ大切に受け継がれてきた家族の伝承品のような趣があります。これらの実物の資料によって、七福醸造の歴史との直接的な繋がりを感じることができ、同社の理念を形作る「感謝」の精神がさらに鮮明に伝わってきます。
試食のセッション:白醤油を使った料理の実力をみてみましょう

見学の締めくくりとして、七福醸造の製品を使ったシンプルな日本料理を試食できます。まずは、卵、白だし、水だけで作られた温かく風味豊かな卵スープです。このスープは、家庭的で心温まる味わいです。次は、カットしたきゅうりに白だしをほんの数滴垂らして、10分ほど置いた「きゅうりの浅漬け」です。この一品は、驚くほどさっぱりしていて、後味を引くおいしさは、おつまみにぴったりです。

溶き卵と「今日も玉子焼き♪」という白だし入りの玉子焼きの素をスプーン1杯入れて作った「だし巻き玉子」は、非常に濃厚な風味で、うま味・塩味・甘味、玉子の自然なおいしさが絶妙に調和した味わいです。家庭で簡単に再現できるこの料理は、日本の本物の味をご家庭の食卓にもたらすのに最適です。
七福醸造の製品で、日本の味 “ありがとうのお土産”を持ち帰りましょう

* 価格は2025年5月時点
「ありがとうの里」のショップには、七福醸造の全ての製品が揃っています。白醤油や白だしをはじめ、皇室からも高い評価を受けた有機白醤油などのプレミアム商品も購入できます。

また、そばつゆ(日本の麺料理に使われるだし)の「日本のつゆ」もあります。この商品は日本蕎麦保存会主催による【おいしいそばつゆ大賞2023】にて、グランプリを獲得した逸品です。
自宅で本格的な日本風の玉子焼き(だし巻き卵)を楽しみたい方には、白だしを使用した特別な調味料「今日も玉子焼き♪」がお薦めです。
さらに、ショップには白醤油を使用したクッキーやその他さまざまな商品が並んでいるので、ユニークなお土産を見つけることができるでしょう。これらの商品は、白醤油が甘味や塩味の料理に幅広く応用できることを示しています。
その他、日本の梅を15年以上の長期に渡り渡り熟成させたノンアルコール飲料は、甘くて香り豊かな一品として人気です。

購入した製品には、日本語と英語で書かれた便利な日本料理のガイドブックが付いてきます。このガイドブックには、七福醸造の製品を使った家庭料理のレシピが掲載されています。
まとめ
アクセス:「ありがとうの里」への行き方

「ありがとうの里」は、名鉄線「北新川駅」から徒歩15分の便利な場所に位置しています。北新川駅までは、名古屋駅から電車で46分、または中部国際空港セントレアから約1時間20分でアクセスできます。
訪問をより充実させるために、「ありがとうの里」の見学に加え、周辺の碧南市(へきなん)の名所を巡るのもお薦めです。例えば、うなぎ料理を提供する「小伴天(こばんてん)」、酒やお土産を取り扱う「金原酒店(きんばらさけてん)」、そして地元の本格みりんを製造する「九重味淋(ここのえみりん)」などがあります。これらを訪れることで、日本の食文化をより深く楽しむことができるでしょう。