愛知県碧南市の九重味淋では、伝統的なみりん製法を学べる工場見学や、みりんを活かした料理やスイーツを楽しめるカフェが併設されています。みりんならではの奥深い味わいをじっくりと楽しんでみませんか?
2025.05.29照り焼きチキンなどの日本料理にある独特のツヤや、ほんのり甘い味わいを楽しんだことはありますか?
その秘密は「みりん」にあります。みりんはお米を原料とする甘みのある調味料で、しょうゆや料理酒と並んで、日本の家庭料理には欠かせない存在です。
愛知県碧南市は、みりんの産地として知られ、4つの個性豊かなみりんメーカーが集まっています。なかでも「九重味淋」は、三河みりん発祥の蔵として、250年以上の歴史を誇る特別な存在です。
九重味淋では、ガイド付きの工場見学を通して、みりんの歴史や製造工程をじっくりと学ぶことができます。見学の後は、併設されたレストラン&カフェ K庵(ケイアン)で、みりんを使った料理やスイーツを味わいながら、その奥深い風味と魅力を存分に体験できます。
みりんとは? 九重味淋の歴史とこだわり

みりんは、蒸したもち米、うるち米に麹菌(アスペルギルス・オリゼー)を植えつけた米麹と焼酎を加えて、半年以上熟成させることで、特有の風味と旨みが生まれます。

みりんの基本的な原材料 Picture courtesy of Kokonoe Mirin
「本みりん」は約14度のアルコールを含んでいます。
みりんは、煮物をはじめ、肉や魚介、野菜など、さまざまな素材を使った和食に使われる万能な調味料です。もち米由来の自然な甘みが料理全体の味に深みを与えるだけでなく、照りのある美しいツヤと香ばしい照りを生み出し、見た目にも食欲をそそります。また、みりんに含まれるアルコールには、肉や魚の臭みを和らげる効果があり、素材本来の旨味を引き立ててくれます。
九重味淋は、現在の愛知県碧南市出身の廻船問屋・石川八郎右衛門信敦(いしかわ はちろううえもんのぶあつ)によって、1772年に創業されました。
それ以来250年以上にわたり、九重味淋は伝統的な製法を守りながら、品質にこだわったものづくりを行ってきました。食べても美味しいほどのもち米を厳選し、熟練の職人が手がける米麹、そして丁寧に蒸留された本格焼酎を使用することで、上質な本みりんを生み出しています。

Picture courtesy of Kokonoe Mirin
看板商品である「九重櫻(ここのえさくら)」は、創業当初の1772年から変わらぬ製法で造られており、その品質から国内外で数々の賞を受賞しています。長年にわたって受け継がれてきた技術は、常により良いものを目指して磨かれ続けています。
心をくすぐる発見がいっぱい!九重味淋の魅力にふれる工場見学

Picture courtesy of Kokonoe Mirin
みりん造りの奥深さ、そして九重味淋と碧南市の深い歴史を体感するには、工場見学がお薦めです。

見学ツアーは、みりんの製造工程をイラスト付きのパネルでわかりやすく解説するところからスタートします。工場内の作業風景はガラス越しに見学でき、実際に職人たちが作業をする様子を間近で見ることができます。
*見学時に作業を行っていない場合がございます。

体験コーナーでは、搾る前の「もろみ」を入れる袋(サンプル)を実際に持ち上げて、その重さを体感することができます。このもろみを搾った後の液体は、本みりんになります。
搾りかすである「みりん粕」はレジスタントプロテインという食物繊維と同じ働きをするタンパク質が含まれており、腸活にもおすすめです。漬物に使われたり、江戸時代には、その甘さからお菓子の代わりとしても活用されていたそうです。
このセクションでは、みりんの味を決める絶妙な原料のバランスや、発酵に欠かせない麹菌を扱う職人の高い技術、そして人の手による丁寧な工程の重要性についても学ぶことができます。

見学の後半では、「九重みりん時代館」へと足を運びます。ここは、九重味淋の歴史の深さを物語る展示スペースです。江戸時代に実際に使われていたみりん造りの道具や容器、古い地図や文献など、貴重な資料がずらりと並びます。

注目すべき展示のひとつに、江戸時代の三河地方を描いた地図があります。この地図からは、三河湾を通じて江戸(現在の東京)へと続く水運のルートが一目で分かります。こうした水路の存在が、九重味淋の創業者にみりんの製造・販売を始めるきっかけを与え、活気あふれる江戸の街に九重味淋の販路が開拓されました。

展示室には、19世紀後半からパリやロンドンで開催された万国博覧会に九重味淋が出品したことを示す立派な賞状も展示されています。当時のみりんはリキュールのように楽しまれており、その繊細な甘みと芳醇な香りが、海外の人々を魅了したことが想像できます。
展示室では、気になる展示物について九重味淋のスタッフが丁寧に説明してくれます。みりん造りという切り口から日本の歴史にふれる、貴重な体験ができる空間です。

最後に訪れるのは、広大なみりんの貯蔵庫。この黒塗りの美しい建物は、300年以上前に建てられたもので、国の「登録有形文化財」に指定されています。
江戸時代には、海が倉庫のすぐそばまで迫っており、ここから直接みりんを船に積み込み、三河湾を通って江戸へと運ばれていました。その名残は、今でも基礎部分に残る海水の跡から感じ取ることができます。
この歴史的建造物は、長年にわたり丁寧に保存・修復されてきており、今もなお九重味淋の歩みを静かに見守り続けています。
レストラン&カフェ K庵 で味わう、みりんのおいしさ

九重味淋の工場に隣接する「レストラン&カフェ K庵」では、みりんの魅力を存分に活かした和食やスイーツをゆったりと味わうことができます。木の温もりあふれる上品な空間は、落ち着いた雰囲気の中でくつろぎながら食事を楽しむのにぴったりです。
ランチタイム(11:00~14:00)はレストラン、午後(14:00~17:00)はカフェとして営業しています。

季節の魚 もろみ漬け御膳. Picture courtesy of Kokonoe Mirin
人気のランチメニューには、本みりん九重櫻(ここのえさくら)をたっぷり使った「みりん角煮御膳」や、みりんのもろみで焼き上げた魚が主役の「季節の魚 もろみ漬け御膳」などがあります。
お子様には、スパゲッティやおかずがセットになった「キッズ・プレート」も用意されており、家族みんなで楽しめるメニュー構成です。
特別な日にお薦めなのは「K庵のおもてなし御膳」で、角煮ともろみ焼き魚の両方が楽しめる贅沢な内容となっています。

「みかわぷりん」 Picture courtesy of Kokonoe Mirin
カフェタイムには、みりんの風味が広がる「みかわぷりん」がお薦めです。とろりとしたなめらかな口当たりと、みりんを煮詰めて作った濃厚なキャラメルソースの絶妙な甘さが特徴です。
また「みりん粕入りしっとりチーズケーキ」も見逃せません。しっとりとした口溶けの中に、みりん粕の自然な甘さとチーズの香りが調和した、コーヒーや紅茶との相性も抜群の逸品です。

「みりん味噌 キャラメルソフトDX」 Picture courtesy of Kokonoe Mirin
K庵では、みりんソフトを使用したパフェも人気です。季節のフルーツやコーヒーゼリーなどと組み合わせた、見た目にも楽しい贅沢な一品となっています。期間限定の季節のスイーツも登場するので、訪れるたびに新しい味に出会えるのも楽しみのひとつです。
K庵でのお食事を通して、みりんの多彩な魅力にふれることができます。繊細で奥深いその味わいを体験すれば、きっとご自宅の料理にも取り入れてみたくなるはずです。
お土産も充実!九重味淋直売ショップへ
K庵に隣接する直売ショップでは、九重櫻をはじめとする九重味淋自慢の製品を購入することができます。中には、3年熟成させて色やコクがより深まった限定みりんも並んでいます。

店内では、みりんを使ったお菓子やバームクーヘン、ドレッシングなどの加工品も品揃えが豊富で、ユニークなお土産が見つかります。ご家庭での料理に活用したい方には、漬物づくりにもぴったりな「みりん粕」もお薦めです。

商品は上品なパッケージに包まれているものが多く、贈答用にもぴったりです。大切な人へのお土産としても喜ばれるでしょう。

店内の一角には試飲コーナーがあり、複数のみりんの味わいを実際に比較しながら楽しめます。

また、店内の壁には、熟成期間によるみりんの色の変化を示すボトルの展示もあり、じっくり見て楽しめる内容となっています。
本物の和の味をご家庭でも楽しむために、ぜひお立ち寄りください。
まとめ
愛知県碧南市に蔵を構える九重味淋は、250年以上の歴史を持つ、日本を代表するみりんメーカーのひとつです。その製造現場を実際に見学し、丁寧につくられた本みりんの魅力を、料理やスイーツを通して味わうことができる貴重な体験がここにはあります。
九重味淋の工場は、名鉄「碧南駅」から徒歩約5分とアクセスも抜群。みりんの新たな魅力に出会いに、ぜひ訪れてみてください。