愛知県・知多半島に位置する武豊町は、大豆と塩水だけで作られるうま味が濃厚な「たまり醤油」で知られています。 この1日プランでは、たまり醤油の魅力的な製造工程を見学し、地元料理やスイーツを通してその味わいを楽しむことができます。
2025.07.23たまり醤油:武豊町が誇る、奥深い味わいの発酵の逸品
HAKKOの特集記事でも紹介されているように、愛知県は日本料理に欠かせない、熟練の技で作られた発酵食品の宝庫です。
醤油や味噌といった定番の調味料は日本全国で見られますが、愛知では一味違う、珍しいバリエーションが存在しています。
それらは代々受け継がれてきた伝統技術によって作られ、奥深く洗練された味わいを生み出しています。
愛知の発酵食材は、日本の食文化をさらなる高みに導く存在といえるでしょう。

今回は、うま味が「濃厚な醤油」として知られるたまり醤油にスポットを当ててご紹介します。
もともと味噌造りの副産物として生まれたたまり醤油は、大豆100%の豆麹に塩水を加え、3年かけて発酵・熟成させて作られます。
その過程で味噌のもろみからにじみ出る液体を何度もすくい上げては、再び上からかけ戻すという作業を繰り返すことで、深みとコクのある醤油が生まれます。
このたまり醤油は、寿司や刺身の味を格段に引き立てる逸品です。
たまり醤油の本場である武豊町は、名鉄線で名古屋からわずか45分ほどの距離にある街です。
この記事では、たまり醤油工場の見学、たまりを使った料理の食体験、そして地元の特産品が買えるお土産店をめぐる、武豊町の1日旅プランをご紹介します。
中定商店:たまり醤油づくりの秘密に触れる

高さ2.5メートルを超える木桶が立ち並ぶ、ほんのり暗くて芳醇な香りに包まれた迷路のような蔵の中を歩いてみましょう。
まるでタイムスリップしたかのように、明治時代の1880年頃へとあなたを誘います。
中定商店は、当時使われていた酒蔵から譲り受けた杉の木桶を使って味噌づくりを始めました。
そんな歴史ある空間で、たまり醤油の原点に触れる特別な体験が待っています。

中定商店は、武豊町を代表する味噌とたまり醤油の老舗メーカーです。
見学では、たまり醤油の工場を間近で見学できるほか、敷地内にある伝承館という歴史資料館も訪れることができます。
伝承館では、創業から140年にわたって使われてきた昔ながらの道具や、当時の記録資料が展示されており、たまり醤油や味噌づくりの歴史を深く知ることができます。
また、たまり醤油の製造工程をわかりやすく描いたオリジナルのイラスト解説もあり、発酵の仕組みや職人の技にふれることができます。
中定商店の工場見学では、たまり醤油や味噌を仕込む「蔵(くら)」と呼ばれる貯蔵庫を実際に見学することができます。
この蔵には、巨大な木桶がずらりと並び、今もなお伝統的な製法で発酵が続けられています。
明治初期(1870年代)、日本の近代化の波の中で、江戸時代(1603〜1868)から続いていた武豊地域の酒蔵の多くが廃業しました。
そこで、これらの酒造りに使われていた杉の木桶が、新たに味噌やたまり醤油の製造用として再利用されるようになったのです。
中定商店では、こうした歴史ある木桶を今も大切に使い続け、伝統の味を守っています。

中定商店の社長・中川さんによると、たまり醤油の濃厚な味わいの秘密は、古い木桶と、伝統的な作業である「汲みかけ(くみかけ)」にあるそうです。
汲みかけとは、木桶の底にたまったたまりをすくい上げ、それを上部が石で覆われたもろみに丁寧にかけ戻す作業のこと。この作業は、1つの桶に対して1日約40回も繰り返されます。
発酵の進み具合によっては、実際に汲みかけを体験できることもあります。
たまりのやさしい香りに包まれながら、じっくりと熟成を重ねる桶の中身を、丁寧に育てていく手間と愛情を感じることができる貴重な機会です。

見学のあとは、中定商店の直売ショップにもぜひお立ち寄りください!
ここでは、自慢のたまり醤油や味噌はもちろん、たまり味のせんべい、コーヒーと相性抜群のたまり醤油クッキー、甘酒ドリンクなど、魅力的な商品が並んでいます。


店内の一角には、うま味の程度と風味が少しずつ異なる4種類のたまり醤油の試飲コーナーもあります。味比べをして、お気に入りの一本を見つけてみてください。
醤油の小瓶の奥には、中定商店のたまり醤油や赤味噌を使った料理の写真やレシピも展示されており、家庭での活用イメージが広がります。
なお、工場見学は事前予約が必要です。現在、見学は日本語のみでの対応となっていますので、ご了承ください。
たまり醤油の旨味を堪能!武豊ゆたか寿しでランチを

たまり醤油について学んだあとは、実際にその味がどのように料理を引き立てるのか、ぜひ体験してみましょう!
武豊町の人々は、たまり醤油に強い誇りを持っており、町内の多くの飲食店で使用されています。
中でもおすすめなのが、名鉄・知多武豊駅から徒歩7分の場所にある寿司店、「武豊 ゆたか寿し」です。
ゆたか寿しは、本格的で美味しい寿司と、丁寧に仕立てられた寿司会席で評判のお店です。
ランチでは、1,500円〜2,500円程度で、質の高い寿司やセットメニューを楽しむことができます。
ディナーになると、3,500円〜5,000円の価格帯で、より豪華なコースや旬の食材を活かした料理が堪能できます。

選択肢はどれも魅力的ですが、ランチで特におすすめしたいのが、お店オリジナルの「まぐろたまり麹漬け丼」です。
この一品は、新鮮なまぐろの切り身をたまり醤油にさっと漬け、すし飯の上にのせ、とろりと半熟の卵と細かく刻んだ海苔をトッピングした、見た目にも美しい丼ぶりです。
まぐろたまり麹漬け丼が運ばれてきたら、まずは半熟卵をやさしく崩してみてください。濃厚な黄身がとろけ出し、まぐろと絡み合うことで、見た目にも味わいにも豊かなハーモニーが生まれます。
まぐろは、たった5分間だけたまり醤油に漬けることで、深みのある香りと豊かなコクが絶妙に引き出されています。
そこに半熟卵のクリーミーさが加わり、たまり醤油のうま味とまろやかさが口いっぱいに広がる、満足度の高い一杯に仕上がっています。
何度でも味わいたくなる、心から満足できる食の体験となるでしょう!

私たちは「武豊ゆたか寿司」で名物の巻き寿司もいただきました。
テーブルに用意されている醤油はもちろんたまり醤油で、寿司の味をさらに引き立ててくれるその風味の良さに感動しました。
武豊でのランチには、ゆたか寿しがイチオシです。
本格的な寿司を堪能しながら、たまり醤油が地元料理の味をどれほど高めてくれるのかを実感できる、まさにおすすめの一軒です。
味噌で作るスイーツ!?「 Pâtisserie KUMURA」でひと休み

武豊町で有名な菓子店のひとつ、Pâtisserie KUMURAは、珍しい親子経営のお店です。
父親の久村さんは和菓子の名人で、一方で息子さんは洋菓子を得意としています。
この和洋の技が融合したスイーツを一度に楽しめることが、地域での人気を大きく高めています。

Pâtisserie KUMURAに足を踏み入れると、驚くほど豊富なスイーツの数々が目に飛び込んできます!ロールケーキやプリン、フルーツケーキから、ようかん、カステラ、フィナンシェ、さらには季節の和菓子(茶道などでも楽しまれる日本の伝統的なお菓子)まで揃っています。

この旅程でPâtisserie KUMURAをおすすめする理由は、味噌や酒などの発酵食品を使った、ここでしか味わえないユニークなスイーツを作っているからです。
たとえば、「みそカステラ」は香ばしく、甘じょっぱい味わいで幅広い世代に人気の一品です。武豊町の名産である赤味噌を使用しており、おやつとしてはもちろん、コーヒーや紅茶とも相性抜群。個包装されているので、お土産としてもぴったりです。

もうひとつのおすすめは「酒蔵景気」。
隣の半田市にある中埜酒造の銘酒「國盛(くにざかり)」を使った繊細なスポンジケーキで、酒のほのかな香りが他の素材と美しく溶け合っています。
特筆すべきはその食感で、まるで綿菓子のように口の中でふわっと溶けてしまいます!
(※アルコールを含むため、運転手やお子さまはご遠慮ください。)

「蔵の香まんじゅう」は、Pâtisserie KUMURAが地元の発酵素材を活かして開発した初期のスイーツのひとつです。名前は「味噌蔵の香り」を意味し、生地には味噌が練り込まれています。一口食べると、ほんのりとした味噌の風味が甘いこしあんと絶妙に調和し、そのおいしさにきっと驚くはず。ふんわり香る味噌の香りも食欲をそそります。
なお、「蔵の香まんじゅう」はPâtisserie KUMURA本店では販売されておらず、本行程で次にご紹介する立ち寄りスポット「まちの駅 味の蔵たけとよ」限定での取り扱いとなりますので、ご注意ください。
Pâtisserie KUMURAは、今後も地元の発酵食材を使った新しいスイーツの開発を計画しています。
それまでは、ぜひゆっくりと現在のラインナップを楽しんでみてください。
ここには、本当に誰もが楽しめる多彩なスイーツが揃っています!
まちの駅 味の蔵たけとよで地元の特産品やお土産を見つけよう

まちの駅 味の蔵たけとよは、地元の特産品が一堂にそろう便利なスポットです。
武豊町はもちろん、知多半島全域や愛知県内の人気商品も取り扱っており、お土産選びにぴったりの場所です。
ここでは、中定商店のたまり醤油をはじめとする豊富なたまり醤油が手に入ります。味噌も、濃厚な赤味噌から、毎日の食卓に合うまろやかな麦味噌まで幅広くそろっています。
さらに、知多地域の名酒蔵6蔵の銘酒を集めたコーナーもあり、お酒好きには見逃せません。

施設の中央には、地元で有名な和洋菓子がずらりと並ぶコーナーがあります。
その中には、Pâtisserie KUMURAの「蔵の香まんじゅう」や、甘さ控えめでお茶請けにぴったりの各種せんべいも並んでいます。

アイスクリームコーナーもお見逃しなく。ここでは、独特のたまり醤油フレーバーのジェラートが味わえます。
醤油の塩気と芳醇な香りがクリーミーなミルクと見事に調和し、一度食べたら忘れられない味わいです!
購入した商品は、施設内のイートインスペースでゆっくり楽しむことができます。
また、地元の人々に愛されるカフェテリアもおすすめです。
たまり醤油のスープが効いたラーメンや、カレーライス、プリプリの海老の天ぷらがのったおにぎりなど、シンプルで満足感のある食事が手軽に味わえます。

特におすすめなのが、みたらし団子です。
もっちりとした柔らかい餅団子に、香り高く甘じょっぱいたまり醤油がたっぷりとかけられており、やみつきになる味わいです!
また、味の蔵 たけとよには、新鮮な地元産の野菜や、日持ちのするお菓子のコーナーもあり、お土産選びにも最適です。
じっくりと武豊の宝物を探しながら、ぴったりのお土産を見つけてくださいね。
まとめ
これら4つの施設は、発酵食品を中心とした日本の食文化を深く知ることができる貴重なスポットです。ぜひ名古屋旅行の計画に組み込み、武豊で味わい深い発見の一日をお過ごしください!
グルメ好きには、100年以上使われてきた木桶で味噌やたまり醤油が熟成され、香りを感じる中定商店の歴史ある蔵が特に印象的でしょう。
武豊ゆたか寿しの絶品まぐろたまり麹漬け丼や寿司、Pâtisserie KUMURAの個性豊かな和洋菓子もお見逃しなく。
また、味の蔵たけとよでは地元の特産品が一か所で手に入り、お土産探しにも非常に便利です。
これらの施設はすべて、名鉄河和線の知多武豊駅からアクセスが良好です。
知多武豊駅は名鉄名古屋駅から電車で約45分、また中部国際空港(セントレア)からは乗り換え1回で約1時間ほどの距離にあります。